鉄筋奥側の豆板(ジャンカ)検出事例
電磁波レーダ(iRadar法)で、鉄筋の奥側にある豆板由来の反応を可視化する。
コンクリート内部の豆板(ジャンカ)は、表面から見えない位置にあると目視では確認できません。本ページでは、鉄筋の奥側に豆板を設けた試験体を電磁波レーダ(iRadar法)で計測し、ディジタル信号処理によって特徴的な反応を可視化した事例を紹介します。あわせて、豆板部を斫って補修した後に同一箇所を再計測し、反応の消失を確認することで、取得した反応が豆板部に由来することを検証しました。
豆板(ジャンカ)とは、モルタルの充填不良により粗骨材が集まり、空隙の多い状態となった部分を指します。コンクリート工学分野では「豆板」が推奨用語で、現場では「ジャンカ」とも呼ばれます。
本内容は2023年度 日本建築学会大会 学術講演会で発表したものです。共同研究先:東亜建設工業株式会社、大木建設株式会社、株式会社鴻池組、東洋建設株式会社
※掲載している計測データは、いずれもADSPIRE 01を使用して取得したものです。
豆板検出に使用した試験体
試験体内部の既知の位置に豆板を設け、鉄筋の奥側から得られる反射波を比較しました。豆板の位置・規模があらかじめ分かっている試験体を用いることで、計測データ上に現れる反応と実際の内部状態を対応付けて評価しています。
計測データの比較
比較対象機では、本測定条件において、鉄筋奥側の豆板に由来する反射を明瞭に判別することが困難でした(a1・b1)。
一方、iRadarでディジタル信号処理を行った結果、豆板部付近に特徴的な青色表示と乱反射が確認されました(b2)。青色表示は空隙に由来する反射特性を示しており、その奥側には豆板部に対応する乱反射が確認されています。
※同一試験体・同一箇所での比較例です。表示結果は使用機器、設定条件、配筋状態、豆板の位置・規模、含水状態などによって異なり、すべての電磁波レーダ装置に対する優位性を示すものではありません。 画像をクリックするとページ内で拡大表示できます
なぜこの反応を豆板由来と判断できるのか
計測データ上の反応が豆板に由来するものかを確認するため、既知の位置・規模の豆板を設けた試験体を計測して特徴的な反応を取得したうえで、試験体の約3分の2を斫って豆板部分を補修し、同一箇所を同一条件で再計測するという手順で検証しました。
補修後の再計測では、補修前に確認された特徴的な反応が消失しました。これにより、当該反応が 豆板部に由来するもの であることを確認しました(a3・b3)。
※本検証は所定の試験体・測定条件下で実施したものであり、豆板の規模や深度、配筋状態、含水状態などが異なる場合には、反応の現れ方も異なります。
実橋梁部材を用いたN²U-BRIDGEでの検出事例
N²U-BRIDGEは、更新・撤去された実橋梁部材を名古屋大学構内に再構築した保全技術研修用の橋梁モデルです。本施設で取得した計測データを用いて、鉄筋の奥側に存在する豆板の反応を、iRadarの通常モードと検出モードで比較しました。実際に供用されていた橋梁部材を対象としているため、試験体では再現しにくい経年状態を含む条件下での判読性を確認できます。KGSでは、同施設を用いた研修においてiRadarによる計測・判読を実施した実績があります。
※N²U-BRIDGEとは、「NEXCO-Central and Nagoya University Bridge model with Restoration and Integrated Deterioration for Global Engineers」の略称で、中日本高速道路株式会社と名古屋大学が共同で構築した保全技術研修用の橋梁モデルです。
iRadar 通常モード
iRadar 検出モード
※同一装置・同一データに対する信号処理条件の違いによる表示例です。判読性は、対象部材の状態や設定条件によって異なります。
現行モデル「ADSPIRE 02」について
本検証に使用したADSPIRE 01は販売を終了しており、現在は後継モデル「ADSPIRE 02」を提供しています。ADSPIRE 02では、一次波形データへの直接アクセスと装置内部の温度データを用いた振幅値の補正・標準化により、時間・周波数に加えて「振幅」も解析パラメータとして活用できるようになりました。東京大学との共同開発によるディジタル信号処理技術を適用し、コンクリート内部の鉄筋・埋設物・変状の判読性向上を図っています。
深度表示レンジは最大900mmまで拡張されており、躯体厚の厚い構造物や深部の埋設物、上層鉄筋の奥側にある変状の識別性向上が期待できます。なお表示レンジは表示可能な範囲を示すもので、比誘電率などの条件に依存し、その深度における対象物の検出を保証するものではありません。
※本ページに掲載している計測データは、いずれもADSPIRE 01で取得したものです。豆板については、専用の検出機能としてではなく、ディジタル信号処理によるコンクリート内部変状の判読技術としてご案内しています。
研究発表・共同研究
本検証内容は、2023年度 日本建築学会大会 学術講演会において発表しました。試験体による検証から実橋梁部材での計測まで、共同研究先各社とともに実施したものです。
発表:2023年度 日本建築学会大会 学術講演会
共同研究先:東亜建設工業株式会社、大木建設株式会社、株式会社鴻池組、東洋建設株式会社
豆板・内部空洞を調査できるか、現場条件から検討します
鉄筋の奥側にある豆板や空洞は、鉄筋からの強い反射の影響を受けるため、対象物の位置や規模、配筋状態によっては判別が難しくなる場合があります。部材厚、配筋状態、想定深度、含水状態などによって判別性は異なりますので、現場条件を分かる範囲でお知らせいただければ、電磁波レーダによる調査の適用可能性を検討します。
- 対象構造物の種類(橋梁、トンネル、建築物など)
- 調査したい範囲・数量
- 部材厚・配筋情報の有無
- 想定される変状(豆板、空洞、浮きなど)と想定深度
- 過去の調査・補修履歴
- 現場の環境条件(高所、狭所、湿潤など)
- 必要な報告書の形式
- 希望時期
※検出可否および判別のしやすさは、部材厚、配筋状態、豆板・空洞の規模、含水状態などの条件によって異なります。
※掲載データは検証時の一例であり、すべての現場で同様の結果が得られることを保証するものではありません。
※掲載している計測データは、いずれもADSPIRE 01を使用して取得したものです。